ワンちゃんのムダ吠えに悩んでいらっしゃる飼い主様も多いでしょう。
そこで、犬のしつけ教室「DOGLY」代表の荒井隆嘉先生に、ムダ吠えの解決方法を伺いました。
DOGLY校長。20年以上のキャリアをもち、飼い主様とワンちゃんが楽しく暮らし、地域の一員となれるよう日々尽力する。犬雑誌のしつけ特集に協力するだけではなく、ドッグトレーナー物語「愛犬しつけ教室プラスわん!」(小学館)監修や、ワンちゃんが出演するテレビ番組の監修などを幅広く手がける。東京都動物愛護推進員、台東区保健所子犬のしつけ教室講師を務めるなど、動物の愛護と適正飼養の普及啓発にも力を入れている。
〒110-0003 東京都台東区根岸3-1-10 アルス鶯谷1階
代表電話番号:03-6458-1483
ワンちゃんの預かり&しつけサービス「ワンちゃんの幼稚園」をはじめ、しつけ教室やトリミング、出張しつけコースなどワンちゃんに関する総合サービスを提供する。
この記事の内容をまとめると……
ワンちゃんが吠えなくてもいい環境作りが重要です
クレートトレーニングはムダ吠え防止にも役立ちます
お留守番の前は、ワンちゃんをたくさん運動させてあげることも大切です
散歩中、ほかのワンちゃんに吠えてしまう場合は「飼い主様がニッコリ謝る」ことで解決する場合もあります
100点満点じゃなくていい、50点のワンちゃんのいいところを見つけてあげてください
ワンちゃんは、テリトリー(=縄張り)の境目に対する警戒心がとても強い動物です。
そもそも、ワンちゃんは牧場に入る人や動物、家に入る不審者を追い出す番犬として人と暮らしてきたという進化の歴史があります。
また、ベル・ドッグといって、来訪者を吠え声で知らせるインターフォンのような役割をしてきた犬もいます。
何千年も「テリトリーの外から来るもの」を警戒して吠えてきたのに、今になって吠えるなってなんだよって思っているかもしれませんね(笑)。
ただ、警戒モードが続くと、ワンちゃんにはストレスがたまります。ワンちゃんのストレスを軽減するためにも、対策を講じましょう。
まず、窓から通行人が見えてワンちゃんが吠える場合、通行人ですからその場を通り過ぎますよね。
そうすると、ワンちゃんは「自分が吠えて追い払った」と誤解します。
そこで、ワンちゃんがいるお部屋はカーテンを閉めるなどして、通行人が見えないようにしましょう。
よく、ベランダにワンちゃんを出している飼い主様がいらっしゃいますが、そもそもベランダに出さないようにした方が良いですが、もしも出す場合はカバーやフェンスを取り付けるなどして、外が見えないようにすることが大切です。
「通行人に吠えるワンちゃんをいさめる」のではなく、最初から通行人が見えない環境にすることをオススメします。
窓の外を見て吠えるワンちゃんは、窓にカーテンをしてあげることが大切です
インターフォンの音にワンちゃんが吠えてしまう場合、ワンちゃんの気持ちには「歓迎」「警戒」の両方があります。
こういった場合、まずは「ハウス」を覚えさせることで、吠え声を軽減することができます。
ハウスのしつけは、「ハウス」と言ったあと、ワンちゃんをクレートやサークルなどに誘導し、入ったら「いい子」とほめてオヤツをあげるというのが基本です。
できれば、ガムなどの時間が掛かるオヤツや美味しいオヤツが入ったトリーツホルダーを一緒に入れるとよいです。
クレートを置く位置はワンちゃんが落ち着ける場所がよいでしょう。
クレートの中で大人しくしていられるしつけを「クレートトレーニング」と呼びますが、クレートトレーニングができていると、ワンちゃんをペットホテルなどに預けるときにも役立ちます。
また、災害時に避難所などにワンちゃん連れで避難したとき、ワンちゃんをクレートの中で大人しくさせていなければならない場面が出てくるかもしれません。そんなときにも役立ちます。
来訪者に吠えてしまうときは、クレートやサークルにカバーをかけて、大人しくしていられたらオヤツをあげるようにしてください。
多くの運動量を必要とする犬(例えば:ジャック・ラッセル・テリアやボーダー・コリーなどのワンちゃん)は、吠えることでストレスを発散させることがあります。
こういった場合は、お出かけ前の運動量を多くすることで留守中のムダ吠えを軽減できることがあります。
ちょっと早起きして朝お散歩し、日光を浴びることで、ワンちゃんの体内時計もリセットされます。
外国には、「疲れた犬はいい犬」という言い伝えがあります。
まずは、ワンちゃんを留守番前に疲れさせるようにしてみてください。
疲れたらワンちゃんは留守番中に寝てくれます。
特に、共働きなどで日中、飼い主様がいない場合、飼い主様の生活は以下のようになっているのではないでしょうか。
この場合、飼い主様が出社中と就寝中は、ワンちゃんは寝ているか、起きていても非常に手持ち無沙汰な状態です。
朝1時間、夜2~3時間ワンちゃんの相手をして、エネルギーを発散させてあげてください。
ワンちゃんが非常に活動的な3歳くらいまでは、特におすすめです。
早朝のお散歩は、留守中のムダ吠え予防に効果的です
ワンちゃんの社会化期(だいたい生後3週齢~12週齢)に家族以外の人やほかのワンちゃんに慣れずに成犬(1歳)になると、人や犬慣れがとても難しくなります。
ワンちゃんにとってアウェイな環境に慣らすのは家だと難しいので、公園などで徐々に慣らすことが必要となります。
ほかの方に協力していただいておいしいオヤツを投げてもらったり、ほかのワンちゃんを連れている人に協力してもらって少しずつ対面させたりすることが必要となります。
飼い主様で解決するのが難しいときは、預かり保育をしてくれるドッグスクールなどを頼ることも必要となってくるでしょう。
「散歩中、ほかのワンちゃんに吠えてしまって困ってるんです」という場合、その何が問題なのかを考えることも重要だと思います。
僕は、飼い主様が
「この子、ほかのワンちゃん苦手なんです、ごめんなさい」
と、吠えかかってしまったワンちゃんの飼い主様にさわやかに、ニッコリと謝ることができれば、何も問題はないじゃないかって考えているんですね(笑)。
もしかしたら、そこから
「私も前はすごく困っていたけど、ちょっとずつ慣らしたら大丈夫になったわよ」
「いいしつけ教室があるわよ」
などと話のきっかけができて、犬友達ができるかもしれません。
ワンちゃんを通して、ご近所付き合いの輪が広がっていくかもしれません。
トレーニングはあくまでも手段です。トレーニングの目的は、飼い主様が快適になることです。
家中どこでもオシッコされてしまったら快適ではありませんから、トイレトレーニングはもちろん重要です。
ただし、散歩中にほかのワンちゃんに吠えてしまうというような場合は、飼い主様がにっこり謝ることができて、先方の飼い主様が「いいんですよ」と受け入れてくれれば、何も問題はありませんよね。
なぜ、ワンちゃんを迎えられたのかを考えてみてください。
ワンちゃんと、楽しく、幸せに過ごしたかったからのはずです。
相談にいらっしゃる飼い主様の中には、「うちの子、こんなにダメなんです」と思い詰めている方もよくいらっしゃいます。
でも、ワンちゃんと会ってみると、決まったところでオシッコできるし、興奮しやすいけど落ち着くとちゃんとオスワリできるし、いい子じゃないですか!! って思うことも多いんですね。
あまり思い詰めず、大変だけどかわいいなっていう気持ちを持っていただいて、我が子と楽しく生活するということも大切だと思うのです。
僕の愛犬のチワワは警戒心が強い子で、よく吠えます。
でも、知らない人からもらったオヤツでも食べるようにトレーニングしたので、警戒しながらもオヤツを投げてもらうと食べるんですね。
そして、「オヤツをくれたからこの人はいい人」と思って、警戒心を解いていきます。
100点じゃありません(笑)。50点くらいかもしれません(笑)。
でも、いいところがいっぱいある、僕にとって最高の家族ですし、僕はこの子を迎えられてとても幸せなんです。
どうか、ワンちゃんのいいところをいっぱい見つけて、思い詰めず、ワンちゃんと楽しく生活していただきたいと僕は願っています。