ノミは13℃で活発化し、蚊は気温が15℃以上になると吸血を始めるといわれています。
また、温度20℃以上、湿度60%以上でダニが繁殖しやすくなります。
まさに、春先からが害虫の活動シーズン。ペットをノミ、ダニ、蚊から守るため、私たちができることをまとめました。
獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行なう。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。
「うちの猫は完全室内飼いだから」「うちの犬は散歩のときに草むらを避けるようにしているから」ノミはついていない、と思っていませんか?
「地域によって違うのかもしれませんが、ワンちゃん、猫ちゃんともに、ノミがついた状態で来院する子は以前よりも増えている印象があります」とおっしゃるのは、東京都目黒区で動物病院「CaFelier」を開業されている小林充子先生。
室内飼いで外にまったく出ない猫ちゃんでも、キャンプやゴルフなどをした飼い主様が外からノミを連れて帰ってきてしまい、猫ちゃんにつくことがあるそうです。
また、ノミの跳躍力は30~45cmほどもあるので、公園の草むらなどから跳んで、そばを散歩していたワンちゃんに飛びつくことがあるとのことです。
しかも、ノミは13℃以上あれば年中活動できますし、そこに血を吸い放題のワンちゃんや猫ちゃんがいれば「食事」にも困りません。
ひとたびノミが室内に入ってしまえば、暑すぎず、寒すぎない快適な日本の住環境は、ノミにとっても極楽なのです。
先日、ノミが大繁殖したため閉鎖されたというパリの警察署がニュースになりましたが、対岸の火事ではないのですね。
「ノミは、人の場合は膝から下の、ふくらはぎのあたりを刺します。
でも、かゆみを感じる方、ちょっとふくらんだくらいで済む方、腫れ上がる方と人によって症状の出方がかなり異なります。
ワンちゃん、猫ちゃんも、かゆがる子とかゆがらない子がいるので、ノミが寄生していると飼い主様が気づかない場合もあるのです」(小林先生)。
「CaFelier」はトリミングサロンも併設されていますが、トリミング中のワンちゃんからノミが発見されることもあるとのこと。
「この2~3年で、ノミは確実に増えているという実感がありますね」(小林先生)
ペットにつくノミには、「ネコノミ」「イヌノミ」がいます。ネコノミは猫ちゃんに限らず、ワンちゃんや人も吸血します。
卵は約2日でかえり、幼虫は約6日、さなぎは6~15日で成虫になります。ノミの成虫はオス、メスともに吸血します。
「ノミはまず、ペットの足に飛びつきます。そして、“なるべく動かないところ”を探して、腰に移動することが多いです。
ワンちゃん、猫ちゃんは自分でお腹をなめることはできますが、腰には舌が届かないので、ノミが住みやすいのです」(小林先生)。
また、ノミに吸血されてかゆみを感じるペットの場合は飼い主様が気づきやすいですが、感じないペットの場合は気づかない場合も多いとのこと。
では、私たちはどうやってノミを見つけたらよいのでしょう?
「ノミは頻繁にフンをします。ペットシーツの上にワンちゃん、猫ちゃんをおいて、腰の部分の毛を逆立てるようになでたり、ブラッシングをしたりしてみてください。
ペットシーツを見て、黒い点のようなものが落ちていたら要注意です。
家庭の台所などで使う消毒用のアルコールを黒い点にかけてみて、赤茶っぽく色が変わったらノミのフンです。
フンがあれば、どこかにノミがいるということです」(小林先生)
背中の中央から下あたりが「腰」です。
ノミを発見したらかかりつけの動物病院に連絡をして、指示をあおぎましょう。
駆虫のため動物病院へ行く場合は、そのときの注意点なども電話で確認するといいでしょう。
ホームセンターなどには、虫ケア用品が販売されています。薬剤を使わずにノミをキャッチする製品などもありますので、取り入れてみましょう。
乾電池式で、光でノミを誘因するので薬剤を使わないノミ取りが市販されています。
日本に生息するマダニには、主にフタトゲチマダニ、キチマダニ、ツリガネチマダニ、ヤマトマダニ、シュルツェマダニ、タカサゴキララマダニがいます。
いずれも、大きさは2~4mm程度で、肉眼で確認できます。
多くは山や川のそばなどに生息しますが、フタトゲチマダニは都市部でも生息が確認されています。
なお、マダニが注目されがちですが、日本には、人のアレルギー性疾患の原因となるヒョウヒダニ(チリダニ)類・コナダニ類・ツメダニ類も生息しています。
「4月終わりくらいから1カ月で、マダニがついたワンちゃんを3件診ました。
そのうち1件は、キャンプから帰った飼い主様がワンちゃんをシャンプーしているとき、お腹についている“何か”を取ろうとしたら動いた気がしたそうで、マダニではないかとご連絡をいただいたうえで来院されました」(小林先生)
マダニはひとたび動物につくと、ずっとかみつきっぱなしでその場を離れません。
引っ張ってしまうと体だけがちぎれ、頭が表皮にめりこんだままで取れない可能性が高いため、マダニを見つけても引っ張らないようにしましょう。
また、「急にホクロができたのですが……」「外遊びから帰宅してからお腹のあたりをよくなめていて、湿疹のようなものが見られるのですが……」
などの理由で来院され、小林先生が診察してみたところ、ワンちゃんの腹部や内股にマダニがついていたという事例もあるとのことです。
日頃からワンちゃんの体をよくみて、なにか異変があったらかかりつけの動物病院に相談をしましょう
ホームセンターなどには、ノミやマダニの駆除や、蚊を寄せ付けない有効成分が含まれた首輪などが販売されています。うまく取り入れて、ノミやマダニをワンちゃんに寄せ付けないようにしましょう。
日本に生息する蚊には、主にアカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ(ヤブ蚊)の3種類がいます。
蚊の主な食べ物は糖分で、普段は花の蜜などを吸って生活していますが、産卵期になるとメスのみが栄養源として吸血します。
蚊は、人やペットの呼吸やニオイ、体温などを感知して寄ってきます。
アカイエカは夕方から夜、ヒトスジシマカは昼から夕方にかけて吸血します。
夜の散歩でも、アカイエカは活動していますので、注意が必要です。
蚊の吸血からペットを守るための虫ケア用品が市販されています。ペット対応の蚊取り線香や室内向けの液体蚊取り、外出時に適した虫よけスプレーなどもありますので、上手に取り入れましょう。