ペットの歯の健康 健康

最近ペットのお口がにおう……。それは、歯周病かもしれません

犬や猫用のデンタルケア製品を、お店などで多く見かけるようになりました。では、オーラルケアを怠ると、ペットのお口はどのような状態になるのでしょうか。ワンちゃん、猫ちゃんの「歯の病気」とデンタルケアについて、とだ動物病院の戸田功先生に伺いました。

この記事の内容をまとめると……

戸田功先生

獣医師、とだ動物病院(東京都江東区)院長、日本臨床獣医学フォーラム幹事。診察のかたわら、獣医向け専門誌に歯科学関連記事を発表。獣医師向け、動物看護士向け、一般向けの講演なども多数行い、正しい歯科医療知識の普及に努める。

ニオイがお口の健康のバロメーターです

「来院される犬のおよそ8割、猫のおよそ5割は、なんらかの歯科的疾患を抱えていますね」と語る戸田先生。その原因はどこにあるのでしょう?

「正しいデンタルケアをしないと、犬や猫も “歯周病”にかかります。歯周病は、歯そのものの病気ではなく、歯を支える歯肉や骨といった歯周組織の病気です。歯周病が進行すると、歯がぐらついたり、抜けたりするだけではなく、歯周病菌や菌から出る悪い物質によって腎臓や肝臓、心臓などに悪影響が及ぶこともあるため、決して軽く考えてはいけません」(戸田功先生、以下同)。

歯だけではなく、体全体に悪影響が及ぶなんて! 愛するワンちゃんや猫ちゃんが歯周病になっていないか、私たちはどのように判断したらいいのでしょうか?

「一番わかりやすいのは、口臭です」。

犬や猫のお口のニオイを嗅ぐと、歯周病かどうかがだいたいわかるとのこと。

口臭と歯周病の程度、お口の中の写真を簡単な表にしてみました。

ワンちゃん、猫ちゃんの歯周病の程度とニオイの関係性

食べたフードのニオイがする程度

犬正常
トイプードル6ヵ月齢

猫 正常
日本猫 1歳齢

ほんのちょっと口臭を感じる

犬歯肉炎
ラブラトル・レトリバー、6歳齢。歯肉が腫れている

猫 歯肉炎
猫、2歳齢。歯肉炎がみられる

卵の腐ったような口臭を感じる

犬 軽度歯周炎
チワワ、上下顎犬歯に歯周ポケットが3mmほどみられた

猫 軽度歯周炎
猫、上下顎犬歯の歯肉と歯槽骨が退縮し、歯周ポケットが2mmほどみられた

愛犬の近くにいると口臭を感じる。また、なめられると嫌なニオイがする。
さらに、愛犬と同じ部屋にいるだけで嫌な口臭を感じる

犬重度歯周炎
ミニチュアダックスフンド、10歳齢。
歯肉や歯槽骨が重度に破壊され、歯の周囲には膿が出ている。

猫 重度歯周炎
猫 13歳齢。
上顎犬歯の歯肉に排膿がみられた

症例写真提供:とだ動物病院 戸田功先生

歯肉炎の写真が、健康そうな歯茎なので驚きました! では、具体的には、お口からどのような口臭がするのでしょうか。

ニオイの種類~こんなニオイに要注意!~

「歯垢にはたくさんの歯周病細菌が生息しています。歯と歯肉の間に歯垢がたまり、歯の周りの組織(歯肉や歯根膜など)が壊れ、歯周ポケットができ、歯肉炎から歯周炎へと進行していきます。歯周病細菌は歯肉の炎症だけではなく、骨や粘膜を腐らせ、見えないところでどんどん歯周病を悪化させていきます。口臭は“歯周病のサイン”というだけではなく、口臭の原因物質そのものが、歯周病をさらに悪化させていくのです」。

持続的なくしゃみがある場合、8割が歯周病です

口臭だけではなく、くしゃみも歯周病のサインである場合が多い、と戸田先生は語ります。

「健康な犬、猫でもたまにはくしゃみをしますが、毎日くしゃみをするようなら、重度歯周炎のため鼻に膿がたまっているのかもしれません。私の経験だと、持続的なくしゃみを訴えて来院された患者さんのおよそ8割が歯周病ですね。ペットが持続的なくしゃみをしていたら、すぐに、かかりつけの動物病院に相談をしてください」。

そういえばうちのミニチュアダックスフンドは、時々、くしゃみを連発します。お口もかなり、ニオうかも。すぐ動物病院に行ってみます!

「ミニチュアダックスフンド、トイ・プードル、イタリアン・グレー・ハウンドなどはあごが細長く、歯周病になりやすい犬種です。トイ犬種(小型犬)は一般的に、歯周病になりやすいですね。猫は、“吸収病巣”と呼ばれる、歯が溶けてなくなってしまう病気もありますが、全体の約半分が歯周病だといえます」。

小型犬を飼っていらっしゃる飼い主さんは、特に注意が必要ですね。

歯周病にならないよう、お手入れはどのようにすればいい?

「犬や猫は、6歳前までと6歳以降でケアの方法が変わってきます。まず、6歳前までは予防が大切です。複数のデンタルケアを組み合わせることをおすすめします」。

最も重要なのは、歯みがき。私たちは、毎食後、歯みがきをしますよね。犬や猫もできれば毎食後、少なくとも3日に1回くらいは歯みがきをしたほうがいいとのことです。

「歯の表面、歯と歯の間、歯の裏側、歯と歯肉の境目をみがくのが理想です。口に触ることになれさせながら、ペット用の歯ブラシで少しずつ行います」。

でも、うちのわんこは歯ブラシを嫌がるのです。どうすればいいでしょうか?

「歯ブラシを嫌がる場合は、お口の健康をサポートする効果があるおやつなどから始めましょう。歯みがき効果のあるガーゼやシートなども市販されていますから、そういったものを使いながら、少しずつお口に触られることになれさせていってください。また、ペットの飲み水に入れるとお口をすっきりさせることができるリキッドタイプや、お口にスプレーするタイプのデンタルケア製品も市販されています。こういったものを複数組み合わせつつ、最終的には、歯ブラシによるケアにもっていきたいですね。歯ブラシには予防用と歯周病治療用の2種類があります。かかりつけの動物病院に相談をしながらお口のケアをしましょう」。

6歳以上のペットには「ドライマウス」対策を

「6歳以上のペットは、予防よりも治療が主体となっていくことが多いです。6歳以上になると、唾液が少なくなる“ドライマウス”になりがちです。唾液にはお口を洗う効果があり、免疫や抗体など、歯周病の原因菌と戦う物質がたくさん含まれています」。

その唾液が少なくなるということは、お口の中のばい菌と戦う力が落ちて、歯の疾患にかかりやすくなるということですよね。

「その通りです。ドライマウス対策として、お口を潤し、唾液の分泌を促進するような効果があるスプレーやジェルなどを、定期的にペットのお口の中に入れ、お口の中を洗浄してあげることをおすすめします」。

「ペットのお口の健康のためには、まずは歯みがき、難しそうなら複数のデンタルケアを組み合わせる」。私も早速、お口の健康をサポートするおやつをうちのわんこにあげるところから始めてみます!