春から夏にかけて気温や湿度が上がってくると、気になるのがペットフードの変質です。
開封後のウェットフードは冷蔵庫で保管される方も多いですが、ドライフードは袋のまま置きっぱなしの飼い主様も多いのでは?
ところが、ドライフードにも様々な虫が付いたり、酸化して変質したり、湿気でカビが生えたりすることがあります。
今回は、ペット栄養管理士監修のもと、ウェットフード、ドライフード、おやつの最適な保存方法についてご紹介いたします。
出版社で雑誌・書籍の編集に携わったのち独立。犬の訓練をドッグトレーニングサロンで学びながら、愛玩動物飼養管理士1級、ペット栄養管理士の資格を取得。著書に「ドッグ・セレクションベスト200」、「室内犬の気持ちがわかる本」(ともに日本文芸社)、「犬からの素敵な贈りもの」(出版社:インフォレスト) など。愛犬はオーストラリアン・ラブラドゥードル。
ドライフード、ウェットフード、おやつは、開封後も適切な保管がなされることを念頭に置いて作られていますから、保管方法に問題があると変質する可能性が高いです。
特に、ウェットフードは腐敗してしまうこともありますから、注意が必要です。
さらに、ドライフードでも湿気たり、酸化したりするだけでなく、虫が付いてしまうことがあるのです。
水分含有量が75%程度のフードをウェットフードといい、缶やレトルトパウチなどに入って販売されています。
ウェットフードは水分が多いので、ドライフードと比べると腐りやすいといえます。
ウェットフードを開封後、食べきれなかった場合はすぐに食品用ラップなどできっちりと包みましょう。冷蔵庫で保管をして2日以内には食べきるのが理想です。
保管していたウェットフードをワンちゃんや猫ちゃんにあげる前には匂いを嗅いでみて、腐ったような匂いがした場合は捨てたほうが無難です。
なお、冷蔵庫に入れておいたウェットフードをワンちゃんや猫ちゃんにあげるとき、冷たいままだとあまり食べてくれないことが多いです。
そんなときは、50~60℃程度のお湯で湯せんして、フードを人肌くらいの温度(36~37℃程度)に戻すと、食いつきがよくなることがありますのでお試しください。
特に、猫ちゃんは冷たいままのウェットフードを好まない傾向がありますので、パッケージごと湯せんしてからあげてみてください。
なお、レンジでチン!は加熱しすぎてしまう場合があり、ワンちゃんや猫ちゃんがやけどをしてしまったり、ビタミンA、B1、パントテン酸など熱に弱い栄養素が壊れてしまったりする可能性があるので、あまりおすすめできません。
ドライフードは水分含有量が10%程度、またはそれ以下と少ないので、ウェットフードなどと比べると腐りにくく、長期保存に適しています。 そのため、ドライフードの袋の封をしっかり閉めて、冷暗所で保管すれば大丈夫と言われてきました。
しかし、ドライフードにもタバコシバンムシ、ノシメマダラメイガ、ヒラタチャタテなどの虫が付くことがあります。
ヒラタチャタテ:年間を通して屋内のどこにでも生息しています。高温多湿となる梅雨時から夏期にかけて、食品や畳から大発生することが多いです。
ノシメマダラメイガ:暖地では3~10月まで成虫が見られます。穀類、果実、野菜、小麦粉などの原料のほか、加工品の菓子類、チョコレート、鳥の餌など多くの食品を加害します。
タバコシバンムシ:年間を通して活動しますが、特に5~11月に大発生します。葉タバコ、穀類の加工品、家畜飼料など乾燥貯蔵食品や、動植物製品を加害します。
これらの虫は小さいので、わずかな隙間からでも侵入してドライフードを食べてしまうのです。
また、虫はフードと色が似ている場合が多く、虫が付いていても気がつかないことがあります。
ペットフードについたタバコシバンムシの写真です。
冷蔵庫に保管するのもあまりおすすめできません。
まず、水分含有量が13%を超えるとカビが発生する可能性が高まるため、ドライフードの品質を保持するためには水分を12%以下に保つ必要があります。
ところが、冷蔵庫からフードを出し入れしてしまうと、温度変化による結露がフード表面に生じることがあり、カビの原因になってしまうことがあるのです。
ウェットフードとは異なり、ドライフードは冷蔵庫で保管するとかえって品質が低下してしまう可能性があります。
炭水化物・たんぱく質・脂質といった三大栄養素のうち、ワンちゃんや猫ちゃんは、栄養を脂質から取る割合が人間よりも高いと言われています。
脂質が欠乏すると1日に必要なカロリーを取りきれず、体重が減少してしまうことがあります。
また、必須脂肪酸も同時に不足する可能性が高く、毛づやが悪くなったり、皮膚炎の原因となったりすることもあります。
そのため、ワンちゃんや猫ちゃんのフードは、人間の食事と比べると、脂質の割合がやや高めです。
脂質は、主に肉や動物性脂肪、または大豆や菜たねなど植物由来の油から、ワンちゃん、猫ちゃんのライフステージに従って、適切な量がフードに加えられています。
脂質の原材料はフードによって様々です。
ただし、脂質は、活性酸素による酸化によって過酸化脂質に変化してしまいます。
過酸化脂質は、体にとって有毒となりうる物質です。
例えば、過酸化脂質によって、細胞が栄養を取り込み、老廃物を排出する作用がスムーズにはたらかなくなり、細胞が老化しやすくなるなどの危険性が指摘されています。
酸化と過酸化脂質の生成を防ぐため、多くのフードには酸化防止剤が添加されています。
酸化防止剤は酸化する油脂の代わりになり、無害な物質に分解されることでフードの風味や栄養価を保っています。
とはいえ、酸化防止剤のはたらきにも限界があります。
酸化は、空気に触れないように密封したり、冷暗所に保管したりすることで、ある程度遅らせることができます。
チャック付きの袋に入れて密封し、なるべく空気に触れないようにするのも有効です。
最近では、ドライフードの虫よけや除湿ができる製品が販売されています。
アース ドライフードの虫よけ&除湿30日用
アース ドライフードの虫よけ&除湿60日用
食品にも使われる酢酸メンチルの効果によって、ドライフードに嫌な虫をよせ付けません。
また、無香なのでフードに匂いが移りません。
さらに塩化カルシウムの除湿効果により、ドライフードの乾燥状態を保って湿気を防いでくれます。
フードの袋にそのまま入れるだけ、という手軽さです。
虫よけ&除湿を入れたら、あとはフードの袋を閉じるだけでOKです。
ガムやスナックなどのおやつは1日1~2個しか食べないので、特に小さい猫ちゃん、ワンちゃんの場合はなかなか減りませんが、虫が付いたり、カビが生えたり、酸化したりするのはドライフードと同じです。
そこで、密封したうえで虫よけと除湿をするのがベターといえます。
おやつの袋に虫よけ&除湿を入れて密封しましょう。
愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)では、ペットフードやおやつに賞味期限などを表示することが定められています。
賞味期限は、「製品ごとに定められた方法で保存した場合、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限」を指します。
ペットフード安全法により、賞味期限は、科学的、合理的根拠に基づき設定することが定められています。
「栄養価や風味を保証できる期限」なので、その期限内に食べきるようにしましょう。