いよいよ、梅雨入りの季節です。人もなんとなく調子が悪くなる梅雨時、ペットの健康にも異変が生じる場合があります。
私たち飼い主は、犬や猫の体調をどのように管理すればいいのでしょう?
CaFelier(キャフェリエ)の小林充子院長に伺いました。
獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行なう。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。
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湿度が高くなるこの時期、ワンちゃんの耳の中で発生しがちなのが「外耳道炎」。
外耳道炎とは、正常な耳に常在する細菌や真菌が増えたり、害虫に感染したりして、炎症を起こすことをいいます。
その原因には「マラセチア」などの真菌や黄色ブドウ球菌、「耳ダニ」(ミミヒゼンダニ)など様々なものが挙げられます。
特に垂れ耳の子は耳の中がムレやすいので、まず、耳の中をのぞいてみてください。
焦げ茶から黒の耳垢は普通でも出ますが、耳垢の量が異常に多く、色が黒いうえに固まっていて臭く、耳介(耳の穴ではなく、外側の部分)が赤い場合は、マラセチア性外耳道炎の可能性が高いです。しきりと頭を振るような仕草があったり、痛みを感じたりする場合もあります。
すぐに、かかりつけの動物病院で診察してもらいましょう。
外側の部分が耳介です
また、耳が異常に臭く、大量の耳垢が乳白色で液状の場合は、何らかの細菌に感染している可能性があります。
耳の中をのぞけないほど、耳介が腫れていることもあります。
特に、垂れ耳のシー・ズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ゴールデン・レトリーバーなどのワンちゃんは、梅雨の時期に外耳道炎が多くなるので気を付けましょう。
また、フレンチ・ブルドッグは耳が立っていますが、耳道(耳の穴)がとても狭く、炎症を起こしやすい犬種です。
一般的に耳介のみぞが浅く、シワが少なく、耳道が広く、耳道の毛が少ないワンちゃんの場合は耳のトラブルが少ないですが、耳介のみぞが深く、シワが多く、耳道が狭く、耳道の毛が多い場合は耳のトラブルが多いという印象があります。
かかりつけの動物病院でワンちゃんの耳を一度見てもらって、トラブルが起こりやすい耳かを把握しておきましょう。
垂れ耳のワンちゃんは梅雨の時期の外耳道炎が多いです。
ワンちゃんの耳は、月に1度くらいは、濡らしたコットンなどでそっと拭いてあげましょう。
ただし、綿棒を耳道に突っ込んではいけません。
耳垢が奥に入ってしまう可能性がありますし、耳道を傷つける可能性もあります。
外側をそっと拭いてあげるだけで十分です。
梅雨時は湿気が多くなるので、皮膚のバリア機構や免疫力の低下により、ワンちゃんの皮膚で細菌が繁殖しやすくなります。
その結果、「細菌性膿皮症」という皮膚炎が起こりやすくなります。
膿皮症は、腹部、内股などによく出ます。
赤いブツブツや、ニキビ、湿疹のようなできものが見られます。
一過性の場合もありますし、基礎疾患がある場合もあります。
かかりつけの動物病院でよく見てもらいましょう。
湿度と温度が上がって蒸し暑くなると、かゆがる子が多くなります。
アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚疾患を持っている子は痒みに関して大変敏感です。
この時期に多くなるカビや、ハウスダストに反応することも多いです。
特に、アトピーの好発犬種である柴犬などは換毛期と絡んで皮膚疾患が出やすい時期でもありますので気を付けましょう。
湿度が上がり、カビが増えやすくなるのが梅雨です。
また、湿気によりダニも増えます。ダニやカビはかゆみの原因となることが多いので、この時期はまめに掃除機をかけましょう。
また、ワンちゃんのベッドをひっくり返してみてください。
カビが生えていたり、おかしな臭いがしたりしていませんか?
ワンちゃんがお気に入りの、よだれだらけになったぬいぐるみも要注意です。
ベッドやぬいぐるみは、手洗いをして、晴れた日によく干しましょう。
もし、洗ったことによってぬいぐるみに興味を示さなくなってしまったら、また新しいぬいぐるみを買ってあげてください(笑)。
ウェットフードをあげている場合、湿度と気温が高い梅雨時は特にいたみやすいです。
食中毒になることもあるので、出して30分~1時間で食べない場合は、下げるようにしてください。
フードを入れている器は、必ず食後に洗いましょう。
また、水を入れている器も、必ず毎日洗うようにしましょう。
洗わないと、カビやぬめりが器について、下痢や嘔吐の原因になることがあります。
猫ちゃんは、梅雨時が換毛期。冬毛が抜け、夏毛へと生え替わります。
なめることにより飲み込んだ毛は、胃の中で毛の塊(毛玉)を作ります。
そして、ある程度の大きさになった毛玉をよく吐くようになります。
吐けない場合は通常、便に混じって体外に排出されますが、便への毛の混じりが少ない場合、胃の中に大きな毛玉が残っている場合があります。
また、毛玉が胃から腸に流れた後、1箇所で止まってしまい、腸閉塞を起こすこともあります。
この場合は手術による毛玉の摘出が必要です。毛玉は、意外と怖いのです。
この時期は嘔吐物や便をよく観察してください。
「また毛玉を吐いているわ」くらいの子のほうが安心です。
毛を吐かない子の場合は、便を見ましょう。
猫は小さい便を5~6個しますが、その便が毛で繋がっているかをチェックしてください。
毛玉が詰まることを予防するには、ブラッシングが肝心です。
最近は手袋タイプのゴムブラシも販売されています。
これなら、手にはめてなでるだけで毛がよく取れます。
毎日のブラッシングで、毛玉を吐いたり、毛玉が胃や腸に詰まったりすることを予防しましょう。
猫ちゃんは特に、「置き餌」をして好きな時間に食べられるようにするケースが多いです。
ウェットフードは水分が多く、あまり水分を取りたがらない猫ちゃんにとてもよいフードですが、この時期は食中毒を避けるため、30分~1時間で下げるようにしてください。
また、水を入れる器もよく洗いましょう。
飲水量の低下が気になる場合、水がわきでる「ファウンテンタイプ」の飲水器などを取り入れてみてください。
気に入る猫ちゃんが多いです。
梅雨時は湿疹やアレルギー性の疾患なども原因となって、グルーミングの回数が増える傾向があります。
また、神経質で繊細な性格の猫ちゃんの場合、換毛期の過剰なグルーミングによって、脱毛してしまう場合もあります。
多くの場合、お腹の毛が丸く抜けるので、お腹を見せてくれる猫ちゃんの場合は、お腹をよく見てあげるようにしましょう。
夏に向けて、体調を崩す子が増えるのが梅雨です。
ワンちゃん、猫ちゃんの様子を注意深く見てあげましょう。
何か気になることがあったら、必ずかかりつけの動物病院に相談をしてください。