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【獣医師監修】多頭飼いの心得①「もう1匹欲しい」ときは先住犬の性格を要チェック

「1匹目も落ち着いてきたし、もうそろそろうちも2匹目がほしい……」。犬と幸せな生活を送っていると、よく考えることです。「でも、うちの子の性格で多頭飼いができる?」「新しい子はどんなふうに迎えたらいい?」「猫を迎えたいけれど、犬と猫は多頭飼いできるの?」と、疑問は付きません。そこで、犬の多頭飼いについて、小林充子先生にお答えいただきました。

小林充子先生

獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。保護猫活動、保護犬活動にも熱心で、ミルクボランティアなども積極的に行っている

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先住犬が多頭飼いに向いていないケースは4つあります

先住犬がいて、もう1匹後から迎えたい場合、気になるのは先住犬が多頭飼いに向いているかということですよね。
犬の場合は、そもそも多頭飼いに向かない犬種というのは経験上、あまりいません。
多頭飼いに注意が必要、もしくは多頭飼いが難しい場合として、以下の4つのケースが考えられます。

①ピットブルやボクサーなどの闘犬種で、かつ闘犬種のもともとの気性が強く出ている子
②ほかのワンちゃんを威嚇するより先に口が出てしまう性格の子
③他の犬を噛んで怪我をさせてしまったことがある子
④例えば先住犬がチワワで後住犬がバーニーズなどの大型犬というように、体格差がかなりある場合

以上の場合は、先住犬が後住犬を受け入れるまでは細心の注意が必要です。
また、プロのトレーナーの助言を得たほうがいいと思いますが、やはり多頭飼いが難しいケースもありますので、慎重に考えた方がいいでしょう。
そうでない場合は、先住犬が後住犬を受け入れるまでの期間は先住犬の性格によって差が出るものの、最終的には受け入れてくれることが多いです。
また、④体格差がある場合ですが、例えばゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーなど、1歳になるまではヤンチャですが、2歳くらいになってからは温和で落ち着いた性格になることが多い犬種は、先住犬がチワワなど体格差のある犬でもうまくいくケースが多いです。

保護犬を迎える場合は心の余裕が必要です

(1)保護犬の心の傷をケアしてあげましょう
後住犬が保護犬の場合は、慎重な対応を要すると考えた方が良いでしょう。その子が保護された経緯がどのようなものであっても、大なり小なり心に傷を負っています。その傷の大きさによっては、先住犬との相性にも影響することがあるからです。
保護犬の場合は、先住犬や家族に溶け込むまでに時間を要します。長ければ1年ほどかかることもありますので、お迎えになる飼い主様の側にも心の余裕が必要です。その子の現状をそのまま受け止め、「もう大丈夫なんだ、ずっとここにいていいんだ」とその子が心底安心できるまでゆっくりと待ってあげましょう。保護団体の方と相談しながら、無理せず受け入れてあげるようにしてください。

(2)トライアルに時間をかけましょう
ミックスの中型犬の保護犬は経験上、神経質で繊細な子が多いです。常にしっぽを巻いて腰を低くして歩き、大きな音がすると飛び上がりガタガタ震えているイメージです。先住犬が優しく温和な犬でも、いつもおびえていたりします。
多くの保護団体ではトライアル期間を設けていますので、保護団体の方と相談をしながら、トライアルに時間をかけるようにしましょう。気になることはすべて保護団体の方に相談し、情報を共有することが大切です。
また、猫の場合は「兄弟猫を両方引き取ってほしい」という依頼がよくあります。
犬の場合は人になつくので、兄弟犬が別々の家庭に引き取られてもお互いがいなくなったことで情緒不安定になったりするケースは少ないため、両方引き取るというケースはあまりありません。

先住犬がシニアの場合、後住犬がよい刺激となることも

(1)先住犬が若返ったという話もよく聞きます
先住犬が9歳以上のシニアの場合、後住犬を迎えることがいい影響となるケースが多くあります。
シニアの子はわがままになったり、赤ちゃん返りしたりすることがありますね。また、昼夜逆転しやすく、1日中寝ていることもあります。
そんな時、新しく犬を迎えると、後住犬が先住犬の脳や五感によい刺激を与え、先住犬が若返ったというお話も患者様からよく伺います。
また、シニアドッグは犬同士の順位付けや争いなどに興味をあまり示さないことが多いので、後住犬との関係がうまくいくケースもよくあるのです。

(2)子犬の底抜けの体力には要注意です
もっとも、先住犬がシニアの場合は、注意点もあります。
後住犬として迎える子が子犬の場合、子犬は遠慮というものをまったく知らず、体力の塊なので、シニアに興味津々で近寄り、遊びをねだります。シニアは体力がないので、疲れてしまうんですね。
飼い主様は、後住犬がある程度成長するまでは、先住犬が疲れないよう気を配りましょう。慣れるまでは、生活する部屋を分けることも必要になってきます。

(3)シニアが後住犬のご飯を食べないように気を配りましょう
最も気を付けなければいけないのは、ご飯です。シニアになると持病を持っている子も多く、それに合った療法食をあげることが多くなります。
もちろん栄養たっぷりの子犬用フードのほうがおいしいですし、香りもいいです。シニアのワンちゃんは、療法食よりも後住犬が食べているフードをほしがるはずです。
うっかり見逃した隙に、先住犬が後住犬のフードを食べてしまうこともありますので、食事のときは必ず見ていてあげるか、後住犬はケージの中でフードをあげるようにするといいでしょう。また、逆に、後住犬が先住犬のフードを食べてしまうことがないように気を配ってください。

(4)先住犬のお気に入りの場所をキープしてあげましょう
先住犬が自分から積極的に後住犬の匂いを嗅ぐなどして関わっていくときは、見守ってあげましょう。
そういったすべてのことが、シニアの脳にいい刺激となります。
また、シニアの場合は、家の中でよく陽が当たる場所など「お気に入りの場所」が決まっていることも多いです。シニアのお気に入りの場所は、後住犬に取られないように守ってあげることも必要です。

先住犬と後住犬が同じ犬種だとトラブルが少ないです

経験上、先住犬と後住犬が同じ犬種の場合は、トラブルなく多頭飼い生活がスタートすることが多いです。犬を飼ったのは先住犬が初めて、多頭飼いするのは初めてなどの場合は、同じ犬種から多頭飼いをスタートするのがオススメです。

後住犬を迎えた後は「先住犬ファースト」がオススメです

(1)先住犬と後住犬が互いにまねをし合います
先住犬が頑固な性格で、家族に執着が強い場合は、家族の愛が後住犬に向くことにストレスを感じやすいです。
また、後住犬は、先住犬のまねをしようとします。後住犬のほうが体の大きい場合でも、先住犬が飼い主様の膝の上に乗っていたら膝に乗ろうとします。
先住犬を優先したいけど後住犬も同じように可愛がってあげたいかと思いますので、このような場合は、先住犬を膝から下ろしてから後住犬を膝に乗せるよりも、できれば両方の子を膝に乗せてあげると関係がうまくいきます。
先住犬が後住犬のまねをすることもあります。例えば、先住犬が時折、トイレを失敗する子でも、後住犬のトイレがうまくできたのですごく褒めたら先住犬がトイレを失敗しなくなったという話もよく聞きます。
すべての犬にとってのモチベーションは、飼い主様の愛や褒めです。「すべての良い行動はワントーン高い声で褒め、悪い行動は現行犯の場合のみその場で叱る」を徹底すると、先住犬も後住犬も育てやすい子になってくれます。

(2)はじめのうち、トイレは複数あったほうがいいです
後住犬を迎えてトイレのしつけをしているときは、トイレを複数置いておいて、後住犬がトイレの失敗をしないようにしてあげることが大切です。
先住犬が家でトイレが出来ない場合でも、後住犬が家でトイレができるようになると、先住犬も家でできるようになることがあります。もっとも、これはマーキングの一種であり、ほかの犬のおしっこの上に自分の匂いをつけたがる習性によるものです。
先住犬、後住犬ともにトイレのしつけができている場合は、最終的にトイレを1~2カ所に統合しても大丈夫です。

後から猫を迎えたい場合

(1)先に犬、後に猫の場合はうまくいくケースがとても多いです
よく言われることですが、犬は人、猫は場所になつきます。新しい家庭に入る場合、猫はもともとその家にあるものを許容しますので、犬は家、飼い主様に付随するものとして認識し、受け入れます。
「この家に住むにあたり、この子(犬)はくっついてくるものだからしょうがない」
と思うのですね。

(2)しつこくしない犬のほうが猫からはモテます
後から猫を迎えた場合にうまくいく先住犬の性格として、「後から来た猫に興味はあるけど、そこまでしつこくしない」「猫から犬に近づいて行っても嫌がらず、くんくんと匂いを嗅がせてくれる」が挙げられます。
いずれにしても、後から猫を迎える場合、特に猫が子猫の場合はうまくいくことが多いので、さほど心配しなくても大丈夫でしょう。

多頭飼いをすると、犬同士、犬と猫同士の関係を見て、飼い主様もほっこりすることが多くなるでしょう。また、先住犬が虹の橋を渡ったときも、後住犬や猫が飼い主様を癒してくれるので、ペットロスが軽くなることもあります。迎えたワンちゃんや猫ちゃんを大切に、幸せなペットライフをお送りください。

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