比較的多い犬の皮膚疾患として、膿皮症、マラセチアや皮膚糸状菌など真菌が原因の疾患、アレルギー性疾患などが挙げられます。今回は、犬によく見られる皮膚疾患の原因や症状などについて小林充子獣医師に伺いました。
獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行なう。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。
Index
(1) 原因
膿皮症とは、皮膚がブドウ球菌などの細菌に感染することで発生する皮膚疾患の総称です。これらの細菌は常在菌として皮膚に存在していますが、犬が健康なときは皮膚が本来もつ抵抗力によって増殖が抑えられています。ところが、アレルギー性疾患、クッシング症候群や甲状腺機能低下症などのホルモン異常、ニキビダニ症や皮膚糸状菌症などがあったり、季節の変わり目などで抵抗力が落ちたりすると、細菌が増殖して膿皮症となります。
(2) 症状
皮膚の赤み、膿疱(のうほう・ウミのかたまり)、脱毛などが脇の下や鼠径部(そけいぶ・お腹側の太ももの付け根)、もしくはお腹全体、腰などに見られます。個体差はありますが、痒みが強いことがあります。
(3) 好発犬種
シー・ズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウエスティ)、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ゴールデン・レトリーバー、アメリカン・コッカー・スパニエルなどに多く見られます。また、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ペキニーズなどの短頭種(たんとうしゅ・頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い犬。いわゆる鼻ペチャ犬)も、顔のシワの部分に汚れがたまりやすいのでまめに拭かないと膿皮症になりやすいです。また、梅雨時や台風のシーズンなど、湿度が高い時期に起こりやすいので注意が必要です。
(4) 対処法
膿皮症は、基礎疾患を発見することがとても大切です。基礎疾患を治療しないと再発を繰り返すので、かかりつけの獣医師とよく相談をしてください。
(1) 原因
マラセチアは、犬の皮膚や外耳などに常在している酵母様真菌です。健康なときは問題ありませんが、季節の変わり目や梅雨どき、台風が連続して発生しているなど湿度が高いとき、なんらかの基礎疾患で体の抵抗力が落ちているときなどに異常に増殖して皮膚炎や外耳炎などを起こします。
(2) 症状
皮膚や耳が赤くなり、かゆがってカーペットやベッドなどに体をこすりつけたり、ずっとかいたりします。また、かさぶたやフケが出ることもあります。また、耳の中でマラセチアが増殖したときは、耳をひっかいたり、ベッドやタオルなどに耳をこすりつけたりという症状が出て、茶褐色、もしくは黒っぽい色の耳垢が出ます。このようなときは、すぐにかかりつけの獣医師に相談をしてください。
(3) 好発犬種
膿皮症の好発犬種と同じく、シー・ズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウエスティ)、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ゴールデン・レトリーバー、アメリカン・コッカー・スパニエル、柴犬などに多く見られます。また、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ペキニーズなどの短頭種(たんとうしゅ・頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い犬。いわゆる鼻ペチャ犬)も、顔のシワの部分に汚れがたまりやすいのでまめに拭かないと膿皮症になりやすいです。また、梅雨時や台風のシーズンなど、湿度が高い時期に起こりやすいので注意が必要です。
(1) 原因
犬が真菌(カビ)に感染して発症します。原因となる皮膚糸状菌は20種類ほど報告されていますが、ミクロスポルム・カニス(Microsporumcanis)という真菌が原因になることが多いです。
(2) 症状
頭頂部や耳、顔のまわり、足先、しっぽなどが円形に脱毛し、その内側が紅くなるのが特徴です。痒みは軽度であることが多いですが、たまに強い痒みを訴えることがあります。皮膚糸状菌は犬から人に、人から犬にうつります。人が皮膚糸状菌に感染すると、丸い輪っかのような湿疹(リングワーム)が出ます。痒みは人それぞれで、強い痒みを感じる方もいらっしゃいます。
一度発生すると、真菌が毛に絡まりやすく残りやすいので、根治が難しいです。かかりつけの獣医師によく相談をしてください。
(3) 対策
皮膚糸状菌は自然界に存在する真菌です。糸状菌は毛根にまで侵入するため、感染した被毛や糸状菌の胞子が生活環境中に飛ぶことで感染していきます。多頭飼いの場合、1頭でも皮膚糸状菌症と診断されたら、無症状でもキャリアの可能性があるので、感染していないかどうかの検査をかかりつけの獣医師に相談してください。
皮膚糸状菌はとてもしつこいので、次亜塩素酸など塩素系の洗剤を使って家の中の掃除を徹底してください。
(1) 原因
ハウスダスト、食物などのアレルゲンが原因となります。
(2) 診断基準
① 初めて発症した年齢が3歳未満
② 室内飼育である
③ コルチコステロイド治療によって痒みが治まる
④ マラセチア性皮膚疾患が慢性化、あるいは再発を繰り返している感染症
⑤ 前肢に皮膚病変が認められる
⑥ 犬の内耳や外耳など耳介部に皮膚病変が認められる
⑦ 耳介辺縁(じかいへんえん・耳のふち)に皮膚病変が認められない
⑧ 腰背部に皮膚病変が認められない
以上の診断基準のうち、5個以上に該当するとアレルギー性皮膚疾患の可能性が高いです。
(3) 好発犬種
柴犬、フレンチ・ブルドッグ、シー・ズー、ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア、ラブラドール・レトリーバー、アメリカン・コッカー・スパニエル、パグなどによくみられます。
(4) 対策
基本的には根治が難しいので、トリガーとなるアレルゲンを同定し、アレルゲンを避けることが大切です。アレルゲンには、ハウスダストやカビ、ノミ、ダニ、鶏肉、米、小麦などの食物などがあります。
アレルゲンの同定については、かかりつけの獣医師に相談をしてください。また、「アレルギー対応の処方食を与えたらかゆがらなくなった」ような場合は、食物が原因と考えられます。このような場合はかかりつけの獣医師と相談をしながら、処方食を与えるようにしてください。