「発情期」「ヒート」犬と猫とは違います 健康

【獣医師監修】メスへの「不妊手術」について

メスのワンちゃん、猫ちゃんと暮らしていると、避けられないのが「ヒート」「発情期」の問題です。犬と猫の「ヒート」「発情期」はどのようなものでしょう?犬のヒート、犬と猫の「ヒート」「発情期」の違い、ヒトとの違い、そして「不妊手術」についてまとめました。

小林充子先生

医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行なう。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。

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犬のヒートのしくみと症状についてまとめました

1. 小型犬は8カ月、大型犬は10カ月ほどでヒートを迎えることが多いです
メス犬の発情期を「ヒート」といい、出血を伴うことから犬の「生理」と呼ばれることもあります。犬の出血は発情の準備なので、出血期間は「発情前期」、出血が止まって1週間から10日ほどが「発情期」です。初めてのヒートを迎える時期は個体によって様々ですが、小型犬は8カ月くらい、大型犬は10カ月ほどが目安です。2kg未満の小さい子は1歳ほどで迎えることもあります。

2. 発情前期は2週間ほど出血します
出血は1週間から10日ほど続き、乳腺が腫れて陰部がぷっくりします。陰部を拭くと痛がったり、舐めすぎて陰部が肌荒れしたりするなどの症状が見られることもあります。また、発情前期は落ち着かなかったり、元気がなかったりします。
ソファーなどに血が付着するときは、犬用のオムツなどを使うといいでしょう。

3. 出血が止まってから1週間から10日が発情期です
犬は出血が止まって1週間から10日ほどが「発情期」で、この期間に交尾をすると受精します。オス犬と会わせると尻尾を横に倒し、おしりを突き出す仕草をします。発情期は食欲が減退したり、情緒不安定になったりします。
その後発情期が終わってからおよそ2ヶ月間は、発情後期や発情休止期と言われる期間に入ります。

4. 人間の「生理」とは異なります
発情前期に出血を伴うことから「生理」と呼ばれることがありますが、ヒトの生理に伴う出血とはしくみが異なります。ヒトは、卵巣から卵子を排出する時期(およそ1カ月に1回)に合わせて子宮内膜を膨らませて受精卵を待ちます。卵子が受精しなかったときは子宮内膜がはがれ、血液とともに体外に排出されます。ヒトの生理は受精しないと訪れますが、犬の出血は子宮内膜の充血によるもので、受精する準備が整ったというサインです。

5. ドッグランやトリミングなどは避けて、お散歩もほかのワンちゃんがいない時間帯に
発情前期や発情期のメスの尿の中にはフェロモンが含まれています。このフェロモン、数km離れていても感知できると言われ、これ誘発されてオスも反応が起こります。食欲が落ち、マーキングがエスカレートし、メスを徹底的に追いかけたり、オス同士で喧嘩をするようになったりします。出血している期間はもちろん、出血が止まってから1カ月ほどはなるべくほかの犬がいない時間帯にお散歩するようにしましょう。また、ドッグランの利用は避けましょう。トリミングや動物病院への通院、ペットホテルの利用時は、先方に出血が始まった日を告げて相談してからにしましょう。

猫の発情期と犬のヒートはしくみが違います

1. メス猫は生後6~7カ月で性成熟を迎え、春と秋が発情期です
犬は個体によって発情期がまちまちですが、猫は季節によって発情期を迎える季節繁殖動物です。1年に2回、春と秋に発情しますが、最近は1年に3回発情することもあります。メス猫の発情期は2週間ほどです。
初めての発情期は体重が2.5kgほどになる生後約6~7カ月に訪れるといわれていますが、個体差があります。

2. 猫は「交尾排卵」です
メス猫は2週間ほどの発情期に交尾する都度排卵するので、一度の出産で異父兄弟を産むことができます。生まれてきた子猫の毛色が全頭違うことがありますが、それもこのためです。また、猫は犬のように発情前期に出血することはありませんが、食欲がなくなったり、オシッコの回数が増えたりします。発情期を迎えると特有の叫ぶような鳴き声になり、おしりを高く持ち上げる姿勢を取ったり、トイレ以外の場所でオシッコをしたりします。また、家の中で飼っていてもオス猫を求めて外に行こうとしますので、脱走には注意が必要です。

望まない妊娠を避けるためには、病気予防の観点からも不妊手術をおすすめします

不妊手術をすると犬、猫ともに妊娠をしなくなります。多頭飼いなどの場合で、望まない妊娠を避けたいときは不妊手術をおすすめします。また、不妊手術には病気の予防という一面もあります。

1. 犬の不妊手術について
初めての発情を迎える前に不妊手術をすると、乳腺腫瘍(乳がん)を80~90%程度予防することができます。また、卵巣と子宮を摘出する卵巣子宮摘出術を行うと、卵巣癌、卵巣嚢腫、子宮癌、子宮蓄膿症など卵巣や子宮の病気を予防することができます。
望まない妊娠を避けられますし、発情期のストレスを軽減できるという一面もあります。また、犬連れの旅行やオフ会などの予定も立てやすくなります。
不妊手術をすると基礎代謝量が15~25%ほど減少して太りやすくなるので、フードの量などを調節して肥満を予防しましょう。

2. 猫の不妊手術について
猫も不妊手術をすることで、乳腺腫瘍や卵巣、子宮の病気を予防することができます。また、大きな声で鳴くなど発情期特有の行動も抑えられます。

手術の時期や方法、予算などについてはかかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。

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